梅雨が明けると私のもっとも苦手な季節がやってきた。汗かきでのぼせやすい上にここ10年来の暑さは尋常ではない。細かい神経を要する仕事は秋を待たねばはかどらない。こちらの体調をしり目にトマトのアイコはぐんぐん育ち、庭の中心にジャングルを形成した。バケツに根を張っているとは思えず、幹は駐車場の屋根を超え、隣の古参の藤のつるをも押しのける勢い。丈の短い支柱ではとても足りず、物干し竿くらいの長いサイズを買ってきて紐で結ぶ。日当たりの良い環境がよほど気に入ったのだろう。
親方がくれる野菜も茄子やキュウリにピーマン、そら豆と夏らしくなってきた。茄子は大好物のしょうゆ漬けにする。生のまま薄くスライスし、おろしニンニクとおろし生姜に鷹の爪を入れた醤油につけこむ。ごま油を少々垂らし軽く混ぜれば、もうご飯が止まらないおかずの出来上がり。ポイントはあまり薄くきれいにスライスしすぎないこと。意外だがこうすると水分が出て甘くフニャフニャになり、ニンニクなどの強い味に負けてしまう。だから適当にふぞろいがよろしいです。
忘れた頃コンテナのじゃがいもを引き抜いてみたら、小粒だがちゃんと育っていた。じゃがバタにしたらバカ旨。取れ取れの味に舌鼓を打つ。ささやかな庭からも自然の恵みを受けられるのだなあ。
親方が畑で取れた野菜をたくさん持ってきてくれた♫特大春キャベツは回鍋肉、スパゲティ、アサリの酒蒸しに化ける。めずらしい根元の赤いネギなどもあった。
ゴーヤのカーテンために、ベランダから地上のコンテナまでネットを張って種を蒔き準備完了。これもほとんど親方にやってもらう。あっという間に春の庭は期待に満ち満ちた場所に変貌を遂げた。
日当たり抜群の特等席に移動したトマトのアイコはぐんぐん育ち始めた。ゴーヤも芽吹いて季節は初夏に向かう。南の白梅が実をつける時が近づいた。以前は母親が誰も飲むあてのない梅酒をせっせと作ったものだった。(おかげで年季の入った梅酒の瓶がまだ物置に眠っている)今年は自分が一週間で出来る梅ジュースを作ることにした。
まず収穫したボール一杯の梅を冷凍庫で一晩凍らせる。保存用の瓶をカビがつかないよう焼酎がないのでお酢で拭く。あとは冷凍した梅と砂糖を交互に入れ時々揺するだけでOK。これも楽しみだ。
夏バテ解消に威力を発揮したのがお風呂あがりの一杯の梅ジュース。瓶詰めにしてひと月あまり、エキスの染み出たジュースはもちろん、ぷっくりジューシーな梅の実を最後に食べる至福。昼間の暑さと戦った体に生気がよみがえる。毎夏の定番にすることに決定だ。
同じく今ひとつだったのはシソで、30cm程の高さにしか伸びず葉っぱも貧相。かたや共に地植えのしし唐はかなり健闘、次々と実をつけるため買う手間が省け大いに助かる。しかし土が痩せているからか表面がふにゃふにゃで弾力が足りない。親方の畑でとれる野菜のようにはいかなかった。
自分でも何か植えようと、しし唐やシソの種を買って来て蒔いてみた。先日の激突にもめげず新品の車を運転し、ホームセンターで培養土を手に入れる。冬場食べ損ねたじゃがいもも数個プランターに埋め込んだ。
お向かいの娘さんも庭いじりが好きで野菜を毎年作っていた。挨拶すると放し飼いの特大レトリバーがクンクン寄って来る。『ゴーヤの苗入りますか〜?』おととし種から育てて失敗した緑のカーテンのリベンジもすることに。
仕上げに車止めを付けてくれた職人さんは、長年の馴染みでうちの親方的存在。その人が近郊に80坪程の畑を趣味でやっていた。せっかく空き地が出来たので何か苗を持って来てくれると言う。プランターでバジルを栽培したことはあるけれど本格的な野菜は初めてだ。とりあえずトマトの苗を持ってきてもらう。バケツ大の鉢に10cm位の丈で“アイコ"という種類。楕円形のミニトマトがたくさん出来るらしい。